研究室の博士課程を卒業した向山さんが心臓発作で帰らぬ人となられた、という悲報を小笠原に出かけている玉田君に知らせたら、「その頃、小笠原ではこんな花が咲いていました。」と、優しい花の写真を送ってくれた。
小笠原の父・兄・妹・聟島にのみ分布する固有種である。3-4月、枝先に12mmほどの白い花を散状に付ける(房散花序)。実は10mmほどで、黒紫色に熟す。葉は奇数羽状複葉で、写真からも解るように、先や縁に綿毛を付ける。
小笠原で見られる類似種に「シラゲテンノウメ」があるが、これは地を這うように枝を張る。<タチ>テンノウメという名前は、こちらが立ち上がって枝を伸ばす特徴を捉えたものである。また、複葉の小葉も、タチテンノウメの方が13-14対で、多い。
学名はOsteomeles boninensisで、バラ科テンノウメ属の常緑低木である。boninensisは小笠原諸島の固有種であることを示す。