小笠原に行っている玉田君から3つ目の貴重品種の画像が届いた。恐らく、世界に只一株しかないツツジの野生株の花である。「ムニンツツジ」。ムニンは小笠原諸島を指す言葉で、学名のboninenseも同音からきている。玉田君の便りには、「山ではちょうど今、ムニンツツジの花が咲いています。先日知り合いと見に行ったので、久し振りに写真を送ります。野生株は一株しか残っておらず、現在は増殖のために苗の植栽がなされています。写真の花は野生株のものです。」とあった。
小笠原父島の固有種で、南西諸島にあるケラマツツジが近縁種であると考えられている。昔は父島の躑躅山に沢山咲いていたが、次第に減って、今では写真の一株を残すだけになっている。1984年頃から東大の小石川植物園を中心として、苗の植栽が試みられたが、永らく成功しなかった。鹿沼土や桐生砂など排水の良い培養土を用いて発芽させても、植え戻しが効かず活着させることが出来なかったが、現地である躑躅山のラテライトを含む土を使うことによってようやく成功した。
1987年頃から植え戻しを初め、躑躅山の元自生地に戻したものは、順調に生育して花を付けたが、父島の他の場所に植えたものはうまく行かなかった。躑躅山の土壌に特化して発達してきた種のようである。
絶滅危惧種の保存に取り組む人たちの努力がなかったならば、今こうして開花している花の写真を見ることはなかったであろう。盗採を戒めるとともに、自然環境を破壊すること無く共生を目指すように心したいものである。
学名はRhododendron boninenseで、ツツジ科ツツジ属である。