久しぶりに訪れた北大植物園で、グイマツの花を見た。以前に会ってから7年になるが、グイマツは元気で一面に花を付けていた。 ***********************************************************************
北大植物園で初めて見たマツである。別名シコタンマツと言われるように、寒帯に分布する針葉樹で高さは30mにもなる。花は5月下旬に咲き、10月頃に1.5cm程度の球果が茶色に成熟する。
カラマツに似ているが、葉はやや短い。新緑も黄葉もカラマツと同じく美しいという。「ぐい」はアイヌ語で「黒い」という意味で、葉の落ちた幹の黒さを言ったものと言われているが、この解釈については疑問があるようで、以下にお二人の方から、詳しい考察のメールを頂きました。
学名は、Larix gmeliniiでマツ科カラマツ属である。
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北海道埋蔵文化財センターで考古学を研究しておられるの鈴木さんから、グイマツの名前の由来について、興味ある考察を頂きましたので、以下にご紹介させていただきます。
グイマツの「グイ」はアイヌ語で「黒い」とかいてありましたが。アイヌ語で黒は「クンネkunne」です。元明朝の頃、中国人はカラフトアイヌのことを「クイ(骨嵬)」と呼んでいました。
現生のニホンカラマツマツの分布域は中部高地、宮城県一部で、グイマツの分布域はサハリン以北でしたね。この和名をつけたアイヌのヒトはサハリンに行かなければグイマツをみる事はできません。北海道アイヌとカラフトアイヌは交易を通じて行き来がありました。
以上より「グイ」がアイヌ語であれば「カラフトアイヌのマツ」という意味ではなかったでしょうか。そうゆうふうに考えるとつじつまが合うように思われます。
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青木さんからも、グイマツの語源について、詳しい考察のメールを頂きました。(2006.1.4)
グイマツの語源について、松前方言考(淡斎如水著)という書物についてあれこれ調べています。それに、この「グイ」の項目があり、グイ(マツ)のことについて考えたことがありました。
池上二良著 北方言語叢考 (2004、北大図書刊行会) 284頁によりますと語源に関して、結論的には、グイという語は、ニヴフ語(ギリヤーク語)[サハリン、沿海州の少数民族の言語] qoj から、アイヌ語を経由して日本語に入ったというのが妥当なところのようです。ただ、原義(元の意味)は、私の不勉強のためまだ私には分かりません。
ほかに、ニヴフ語(ギリヤーク語)から日本語に入ったものとしてトナカイ、クズリ(食肉目の獣)があるそうです。