長野県和田峠の「神代杉」-(1996.5 今野さん)

「昨年,旧中仙道の和田峠のあたりを通ったとき,「神代杉」という案内板を見つけて,杉の古木を見てきました.ごつごつの枯れたような大きな幹だけが残っているように見えて,しかし,ちゃんとわずかな枝の先には、青々と葉をつけているのです! なんだかこちらが元気づけられるようでした」
(1996年5月に旧中山道の和田峠で今野泰子さん撮影)

「ミロのビーナス」か「サモトラケのニケ」を思わせる神代杉の美しい幹

広辞苑によれば神代杉とは「水土中に埋もれて多くの年数を経た杉材。往古、火山灰中に埋没したものとされる。蒼黒色で堅実。伊豆半島・箱根地方・京都府・福井県の海浜地方から掘り出され、工芸品の製作、高級日本建築の装飾に用いる。」とある。
実際には、秋田、山形、中国勝山地方で掘り出され加工された木工品は有名である。
ある木材工芸家の話:「能登半島輪島で神代杉の製材の瞬間を見たことがあります。神代杉というのは「神の世から眠り続けている木」という意味で、大きな地震等や天災が起こったときに、地中に埋まり、瞬時に出来た腐らない環境によって数千年単位で生きたまま埋まってしまったもののことをいいます。不思議なことに、石油や金などは探知機で探すことが出来るのにこの神代杉だけは、見つけることができない。大きな開発があり、山や地面を掘ったときに初めて一千年の眠りから覚めて世に出てくる、そういう物なんです。
神代杉を鋸で縦に割った瞬間、真っ白いんですよ。それが一分間くらいの間ですーっと、空気と太陽の光に触れ、すーっと真っ黒になるんです。そうやって急に千年の眠りから覚める。これを見たとき浦島太郎の話は本当だったんだなあ・・・と思いました。これは木じゃないと味わえない、体験できないものです。それを見て以来、木という物がますます好きになりました。」
埋もれ木が転じて、実際の生木でも1000年もの年を経た巨木を神代杉と呼ぶことが多い。全国各地にあるが、代表的なものは、
奈良県十津川村の玉置神社(標高1073m)樹齢3000年。
群馬県吾妻渓谷の近くにあって樹齢1000年以上。
長野県和田峠にあるものは、かなり痛んでいるが、樹齢1000年以上。
今野さんの撮影したものは長野県のものです。

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